病
院で医師が測った血圧よりご家庭で自分で測った血圧の方が役に立つ、というと意外に思われる方が多いと思いますが、本当なのです。病院の血圧計も家庭用血
圧計もそれぞれその時の血圧を正しく示してはいます。ここでいう「役に立つ」というのは、将来の危険をより正確に予測できるという意味です。血圧が高いほ
ど将来脳卒中、心臓病などになる確率が高くなりますが、最近の研究では病院での血圧より家庭での血圧の方がこれらの病気と関係が深いと言われているので
す。血圧は日によっても時刻によっても変化しますので、病院での月に１〜２回程度の測定では、小さい穴から大きなものをのぞいて見ているのと同じで全体を
正しく評価することはできません。
病院や健診では正常なのに家（職場）で測ると血圧が高い「仮面高血圧」も話題になっています（右図）。日常生活 での活動やストレス、タバコなどが原因で血圧が上がるのではないかと言われていますが、これも病院での血圧だけではわからないわけです。仮面高血圧は普通 の高血圧と同様に脳卒中や心臓病の危険があると報告されており見過ごせません。逆に病院では血圧が高いけれども家では正常の方も多くおられ、白衣をみると 血圧があがるのではないかということで「白衣高血圧」と呼ばれています。白衣高血圧の危険度は普通の高血圧と正常血圧の中間くらいと言われています。
「う
ちにも血圧計はあるけれど、測るたびに違ったりでどうも不安です」という方がよくおられます。家と病院の血圧が大きく違う場合は、ご使用の血圧計を一度は
病院に持ってきていただいて正確かどうかを確認する必要がありますが、最近の家庭用血圧計はほとんど問題ないようです。測るたびに数字が違うのは血圧その
ものが変化しているためで血圧計が悪いのではありません。血圧計は指や手首で測るものより腕に巻くものが推奨されています。測る回数や時刻については、一
言でいえば、いろいろな時刻にできるだけ多く測るほど良い、ということになります。しかしそうはいっても難しいので、とりあえず朝と晩に１回ずつ測りま
しょうというのが今のところの標準とされています（詳しくは職員にお尋ね下さい）。血圧を測ったら手帳などに測定時刻と血圧、脈拍数を記録します。何度か
測った場合も結果はすべて書きとめてください。家庭での血圧は125/80未満なら正常で135/85以上が高血圧です。高いと思われたときは、ご自分だ
けで判断されるのではなく必ず医師とご相談下さい。
すでに高血圧と診断され治療されている方にも家庭血圧は役に立ちます。たとえば降圧薬の量を調節する際に、病院 での血圧は高くても家では低いことがわかっていれば薬を増やさなくてよい場合があります。家庭血圧の情報がなければ病院での血圧だけで判断しなくてはなら ず、その結果、必要以上に多い降圧薬を内服し血圧が下がりすぎるということにもなりかねません。反対に病院に来たときは薬がちょうどよく効いて血圧が下 がっていても、薬の効果が弱くなる時間には血圧が高いこともあり、そういう場合は薬の種類や飲む時刻を変える必要があるかもしれません。こんなことも家庭 血圧がないとわからないのです。
車の運転をするとき道路標識や街灯が多いほど安全に走れるのと同じで、血圧も情報が多いほど正しく管理することができます。医師と共同作業でよりよい高血圧治療を行っていくためにも、是非ご家庭で血圧をお測り下さい。
現在、家庭血圧を使ってよりよい高血圧治療をめざすための研究（ＨＯＭＥＤ−ＢＰ研究）が全国規模で行われてお り、当院も参加しています。新たに治療を開始される方が対象ですが、ご協力いただける患者さんには家庭用血圧計が無償で貸し出されます。ご興味のある方は お声をおかけ下さい。